【自動書記】人生行路 1-4

心の指針(一) 
人生行路じんせいこうろ
人生の道を歩み無事に一生を送ってくには、心の良いパイロットをるかいなかで、大きな違いが生まれてくるものである。そんなことはあずかり知らぬと考えたなら、先々如何いかなる道に迷い込み、後悔しても遅いことを如実にょじつに知ることになるであろう。

れいなくして如何いかにして人と言えよう」かと、又「礼に始まり礼に終わる」との言葉が伝えられてきたが、礼儀を大切にする気風きふうは何処に消え去ってしまったのであろうか。年代の若い層を中心に、身勝手な思考と行動が目立って多くなってきているのも、あながち時代の流れとばかり言えず、文明社会の異物とも言える心の乱れの現れ以外にはない。

いく世知せちがらい時の流転るてんに左右されているとは言え、己さえ良ければそれで良いとする邪心じゃしんの働きが、日を追うごとにはびこりつつ、ある現状、如何いかにして無事に人生行路を渡り切ることが出来るかどうかは、心の良きパイロットの導き如何いかんで大きく左右されるものである。

心とは己自らの行いによって味方に着けることが可能で、一人の人間として如何いかなる行いを用いたらよいか過去の己自身の行いを反省し、誤りのあるところ是正ぜせいするように努力したなら、必然と良き心の導きを得て、安全に世渡よわたりすることが出来るようになる。

人としての心の扉を開こうとするに際し、何が特に肝要かんようかと言えば、欲望よくぼう自我じが消滅しょうめつさせて人に対して節度のある思いやりをいだくことが大切である。具体的には常に相手の立場になって考え、感情におぼれずに対峙たいじする者の話によく耳を傾けることである。

しかみだりに人の心を見極めることが出来ずに、いたずらに同情心を寄せて対応すると、相手の心に依頼いらい心を生ませる結果となって修行のさまたげをし、己にとっても過ちをしたことになる。

取り分け子供の場合には、甘やかして言いなりになっていると、何時しか子供の心にたるみを生ませ、努力心、忍耐力など、人としての大切な心の働きの一部を失わせるばかりでなく、非行に走らせる原因ともなり、自らの心にも真実の思いやりを失わせることになる。身をつつしみ行いを正すことは口で語ることはやさしいが、いざ実行の段階になると事のほか難しいものである。人間である以上欲のない者は一人としていないのが世の常である。

人には各々おのおのによって異なる金銭きんせん名誉めいよ色情しきじょう飽食ほうしょく欲など、様々の欲望が着いて回り、煩悩を生まさせて悩み苦しみの原因となるし、人生行路を無事に乗り越えるにあたり、煩悩の元になる邪心じゃしん消滅しょうめつさせる以外には、未来に明光めいこうを求めることは出来ない。

人々の心とは、所詮しょせん弱いものと定説ていせつがあるように、表面うわべ強気のようにかまえていても、切羽せっぱまって己および周りの人達の力では、如何いかんともすることが出来ないと、神仏しんぶつ哀願あいがんすることが常であるのも、心の弱さを象徴しており、そうした者に限って恩を受けても、礼をもっむくいることを知らない者と言えるであろう。

そうした者達は己の心をかえりみよとせず、人助けをしても見返りを心の中では求めている者であって、心底から思いやりのない、汚れのある心を備えている、己の表面を飾る自己中心的な人物である。こうした者に限って人当たりはよく、キビキビとして人と対応するに当たって好感が持たれたとしても、心ある人の心象しんしょうは必ずしも良好りょうこうとは言えない。

心とは人としての人格を育て上げる道に導く反面、邪心じゃしんは人の弱点をたくみにつついて、味方に引き入れることを知って置かないと、甘い誘惑の言葉についほだされて、結果的には邪心の思うつぼまり、己の進路を誤った方向に進んで行くようになる。

人は誰でも天上から与えられている進むべき道がある。経済的な豊かさ、社会的地位が与えられていようが、他人を己の立場と照らし合わせて、考えることは避けるべきである。

一寸いっすんの虫にも五分ごぶたましい」とことわざがあるように、すべて心にかんがみてのことであって、人の姿をとらえて己のえりただすとしたなら、己の心は何を求めようとしているのか、駄馬だばを飾りたて、名馬めいばに見せ掛けているのと同様、己の心は何処にあるのであろうか。

人には各々おのおの微妙ながら異なった才能がある。そのかぎにぎることが出来たとしたなら、迷わず努力を傾注けいちゅうして仕事にはげかたわら、心を天に帰一きいつして己の責任を果たすべく、身をつつしえりを正すべきであって、安らぎの道に入る心の扉はおのずから開かれるものである。

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